ビル管理DXのはじめ方:PM会社が取り組むべき施策
目次
ビル管理のDXを進めるには、設備管理・情報発信・入居者対応という3つの領域に課題を整理し、初期投資が小さく効果が出やすい施策から着手することが基本です。DXというと大規模なシステム導入をイメージしがちですが、遠隔での情報入稿・デジタルサイネージへの移行など、比較的小さなコストで始められる施策も多くあります。本記事では、PM会社・ビルオーナーが実践できるビル管理DXの具体策を解説します。
情報発信DXの実務を具体化したい方は、貼り紙から脱却するビル情報発信のDX もあわせて読むと導入イメージを持ちやすくなります。
ビル管理DXとは何か:なぜ今DXが求められるのか
ビル管理DXとは、プロパティマネジメント業務において紙・電話・現地対応に依存してきたプロセスをデジタル技術で置き換え、業務効率・対応品質・データ活用の水準を高めることです。
ビル管理業界でDXが求められる背景には3つの要因があります。
人手不足と高齢化:ビルメンテナンス業界では担い手の高齢化と人手不足が続いており、限られた人員で複数物件を管理する効率化が急務です。現地対応を減らし、遠隔・自動化で対応できる業務を増やすことが生産性向上の鍵です。
テナントのデジタル期待値の上昇:入居するテナント企業の業務がデジタル化する中、ビル管理のアナログな対応(貼り紙・電話のみ・書面での手続き)は「時代遅れ」と感じられるリスクが高まっています。
ESG・データ開示への対応:GRESBなどのESG評価でエネルギー・廃棄物のデータ収集・報告が求められるようになり、デジタルによるデータ管理体制の整備が不可欠になっています。
ビル管理DXの3つの領域を整理する
ビル管理DXの3つの領域とは、設備管理・情報発信・入居者対応であり、それぞれで異なる課題とデジタル化の方向性があります。
領域①:設備管理 エレベーター・空調・照明・防災設備などの設備点検・故障対応・修繕履歴の管理が対象です。アナログ管理の課題は、点検記録の紙管理・故障検知の遅れ・複数業者との連絡調整の煩雑さです。デジタル化により、設備の稼働状況の遠隔監視・故障の自動検知・点検記録のデジタル管理が実現します。
領域②:情報発信 テナントへの工事案内・休館日連絡・緊急情報・館内ルールの周知が対象です。アナログ管理の課題は、貼り紙の作成・貼り付け・撤去という現地作業の手間と、就業者への到達率の低さです。デジタル化により、遠隔からの情報入稿・一斉配信・コンテンツの自動更新が実現します。
領域③:入居者対応 入退去手続き・クレーム受付・修繕申請・鍵の管理などが対象です。アナログ管理の課題は、電話・FAX・書面に依存した対応の非効率さと、対応履歴の管理の煩雑さです。デジタル化により、オンラインでの申請受付・対応状況の可視化・履歴の一元管理が実現します。
設備管理DXのはじめ方:データ活用と遠隔監視の進め方
設備管理DXのはじめ方とは、既存の設備点検・故障対応の業務フローをデジタルに置き換え、設備の稼働データを蓄積・活用する体制を整備することです。
具体的な取り組みの優先順位は以下のとおりです。
点検記録のデジタル化(低コスト・即着手可能):紙の点検チェックリストをタブレット・スマートフォンでの入力に切り替えます。クラウドでの一元管理により、複数物件の点検状況をリアルタイムで確認できます。市場には中小規模のPM会社でも導入しやすい低コストのSaaSツールが増えています。
設備の遠隔監視(中コスト):エレベーター・空調・電力量メーターにIoTセンサーを設置し、異常値を検知した際にアラートが届く仕組みを整えます。現地に行かなければ分からなかった設備の状態を遠隔で把握することで、予防保全が可能になります。
BMS(ビル管理システム)との連携(高コスト):空調・照明・電力をBMSで一元管理し、エネルギー消費の最適化とデータの自動収集を実現します。大規模物件やREIT保有物件での導入が先行しています。
情報発信DXのはじめ方:貼り紙からデジタルへの移行
情報発信DXのはじめ方とは、テナントへの案内・館内情報の発信を貼り紙・書面から遠隔で管理できるデジタル手段に切り替えることです。
情報発信のデジタル化は、設備管理DXと比べて初期投資が少なく、即効性のある業務改善が期待できるため、ビル管理DXの中でも着手しやすい領域です。
メール・管理ポータルの活用:テナントへの定期的な案内をメールのみに集約し、書面・FAXを廃止するだけでも事務作業の削減になります。テナント向けの管理ポータル(物件情報・申請フォーム・連絡先を一元化したウェブページ)を整備することで、テナントの自己解決率が高まります。
デジタルサイネージへの移行:エレベーターホール・廊下・エントランスの貼り紙をデジタルサイネージに置き換えることで、現地作業なしに遠隔で情報を更新・配信できます。GRAND株式会社のオフィスビルメディア(エレシネマ・エレビ)は端末代・設置費・通信費・保守費をGRAND株式会社の負担で導入でき、PCブラウザから遠隔で情報を入稿・更新できる電子掲示板機能が提供されます。ビル側の初期費用ゼロで「貼り紙からの脱却」を実現でき、PM会社の現地作業工数の削減とビルの美観維持を同時に達成できます。
入居者対応DXと導入ステップの優先順位
入居者対応DXとは、入退去手続き・クレーム受付・修繕申請などの入居者との接点をデジタルに移行し、対応品質の向上と業務効率化を同時に実現することです。
入居者対応DXの具体的な取り組みは以下のとおりです。
オンライン申請フォームの整備:修繕申請・鍵の追加発行・駐車場の変更申請などをウェブフォームで受け付けます。電話・書面対応と比べて、申請内容の記録・担当者への転送・対応状況の管理が格段に効率化されます。
対応履歴のデータベース化:テナントからのクレーム・問い合わせ・対応内容をCRM(顧客管理)ツールで一元管理します。担当者交代時の引き継ぎコスト削減と、対応品質の均一化が期待できます。
ビル管理DXの導入ステップの優先順位
| 優先度 | 施策 | 初期コスト | 効果実感までの期間 |
|---|---|---|---|
| 高 | デジタルサイネージ導入(初期費用ゼロの場合) | ゼロ | 即時 |
| 高 | 点検記録のデジタル化 | 低 | 1〜3ヶ月 |
| 中 | オンライン申請フォームの整備 | 低〜中 | 1〜3ヶ月 |
| 中 | 設備の遠隔監視 | 中 | 3〜6ヶ月 |
| 低 | BMS導入・エネルギー管理システム | 高 | 6ヶ月〜 |
初期費用ゼロまたは低コストで着手できる施策から始め、成果と経験を積みながら高コストの施策に移行することが、ビル管理DXを着実に進めるための実践的なアプローチです。
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